ゲーム・オブ・スローンズ 鉄の玉座に最後に座る人物を英国の歴史から推理

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ハドリアヌスの長城(画像出典 Wikipedia

イングランドとスコットランドの境界近くには、「ハドリアヌスの長城」と呼ばれる世界遺産があります。2世紀ごろ、ローマ帝国はイングランドに侵攻していましたが、ケルト人による北からの侵入を防ぐために皇帝ハドリアヌスが建てさせたものです。高さは5メートル、厚さは3メートルあり、距離は120キロメートルに及びました。1マイルごとに監視所が建てられ、重要な15箇所の地点に要塞があったそうです。北の脅威から南を守るために壁を築く。何かに似ていると思いませんか。そうです。ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」を象徴するオブジェクト「氷の壁」です。

「ゲーム・オブ・スローンズ」の舞台となるウェスタロスの地理や歴史は、イングランドをモデルにしているといわれています。ウェスタロスの形は、グレートブリテン島の下にアイルランドを逆さまにしてくっつけた形に似ているということはファンにとっては有名な話です。また、東のエッソス大陸との位置関係はグレートブリテン島とヨーロッパとの位置関係に似ています。諸名家が「鉄の玉座」をめぐって争うストーリーは、中世イングランドで起きたランカスター家とヨーク家による「薔薇戦争」をモデルにしているといわれています。ランカスター家という名前がもうラニスターっぽいです。

そんな「ゲーム・オブ・スローンズ」もいよいよ終盤に入っていますが、最終的に勝ち残るのは誰なのか。七王国を統治するのは誰なのか。モデルとなっているイングランドの歴史を紐解けば答えが見えてくるのではないでしょうか。

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薔薇戦争以前

イングランドの歴史をウェスタロスの歴史と比較しながらざっくりと見ていきます。ウェスタロスの歴史については以下でも紹介しているのでご参考ください。

ゲーム・オブ・スローンズ 歴史 ホワイトウォーカー 最初の人々 森の子ら って何?
「ゲーム・オブ・スローンズ」では、ジェイミー・ラニスターが王殺し(キングスレイヤー)と呼ばれていたり、デナーリスの父は狂……

ブリテン島はかつてヨーロッパと陸続きでした。大陸から次第に離れ、現在のような島になったのはおよそ8500年前のことだそうです。それよりも遙か以前。およそ70万年前には、当時の人骨の化石が見つかっているので、ブリテン地域で人類の活動があったと考えられています。50万年前ぐらいになると、石器などが人類の痕跡として発見されています。その後、何回かの氷河期を繰り返し、人類が生活できない状態が繰り返されます。氷河期が収まり始めたおよそ1万2000年前、絵画や装飾品などが発見されており、最初の文化が起こったと見られています。そしていつしかブリテンはヨーロッパ大陸から分離し、島になりました。

紀元前5000年頃 土器や磨製石器が作られ、農耕がはじまったと考えられています。

紀元前3000年代 ストーンヘンジなどの巨石遺跡が作られはじめます。ただし、どんな人々が作ったのかはわかっていません。


ストーンヘンジ(画像出典:Wikipedia

紀元前2600年頃 ビーカー人と呼ばれる人々がブリテンにやってきて青銅器を伝えます。彼らはブリテンに定住することはなく、ヨーロッパ各地を放浪し、先住民と交流することで経済の概念を与えたようです。

紀元前5世紀頃 ケルト人がブリテン島に渡ってきて鉄器を伝えます。

紀元前1世紀 ローマ人がブリテン島に侵攻してきます。ローマ人はこの地をブリタニアと呼び、ケルト人など先住民のことをブリトン人と呼ぶようになります。ユリウス・カエサルは「ガリア戦記」の中で「ブリトン人は体に青で模様を描き、戦場で相手を威嚇する」と記しています。ブリトン人は北へ追いやられますが、たびたび侵入したのでローマ人は長城(「ハドリアヌスの長城」)を築いて防衛しました。

5世紀 ローマ本国でゲルマン人の活動が活発になると、ローマ人はイングランドへの植民をあきらめ大陸へ帰っていきます。ローマ人がブリテン島を去ると、ゲルマン系のアングロサクソン人(アングル人・ジュート人・サクソン人の総称)がブリテン島に侵入してきます。彼らは「ノーサンブリア」「マーシア」「イーストアングリア」「エセックス」「ウェセックス」「ケント」「サセックス」という7つの王国を建設し、覇権を争いました。この時代を「七王国時代(ヘプターキー)」といいます。中でもアングル人が作った国が有力だったので、ローマ人はこの土地のことをアングル人の土地「アングリア」と呼ぶようになり、イングランドの語源となります。


800年頃のグレートブリテン(画像出典:Wikipedia

この頃の伝説的なウェールズの王がアーサー王で、アングロサクソン人と争ったとされています。アーサー王の父ユーサーはペンドラゴン(ドラゴンの頭、ドラゴンを統べるもの)と呼ばれ、レッドドラゴンを紋章に使っていました。


円卓と聖杯(画像出典:Wikipedia

アーサー王については実在は疑わしいところがありますが、聖剣「エクスカリバー」や「円卓の騎士」「聖杯探索」、騎士ランスロットなどの題材は人気があり、小説や映画、ゲームなどによく取り上げられています。

ここまでのイングランドの歴史が、すでにウェスタロスの歴史を思わせます。先住民であるケルト人は「森の子ら」、ローマ人は「最初の人々」、あとからやってきて七王国を築いた「アンダル人」はアングロサクソン人がモデルになっている考えられるのではないでしょうか。

史実に戻しましょう。
829年 ウェセックス王のエグバートがイングランドを統一します。しかしその後はヴァイキングの侵入などもあり、不安定な状態が続きます。

1066年 仏ノルマンディー公ギョーム(ウィリアム征服王)が侵攻してきます。ウィリアム1世としてイングランド王に即位し、ノルマン朝がはじまります。ウィリアム1世は、ノルマンディー公というフランス王国の臣下でありながらイングランド王国の君主です。この微妙な関係が、このあともずーっっっと英仏の関係に影を落としてきます。

さて、ウェスタロスではターガリエン家のエイゴン征服王がドラゴンを率いてウェスタロスに侵攻し、七王国を統一します。エイゴン征服王はウィリアム1世をモデルにしていると考えて間違いはないでしょう。

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百年戦争から薔薇戦争へ


バーネットの戦い(画像出典:Wikipedia

1154年 ノルマン朝は4代で後継者が途絶えます。代わりに仏アンジュー伯が王位に就き、プランタジネット朝がはじまります。

1337年 フランスでカペー朝が断絶するとイングランド王が王位継承を主張し、英仏百年戦争が起こります。

1399年 百年戦争の最中。ランカスター家のヘンリーがプランタジネット家のリチャード2世から王位を奪い、ヘンリー4世として即位します。といってもランカスター家はもともとはプランタジネット家の分家です。「ゲーム・オブ・スローンズ」では、ロバート・バラシオンがターガリエン家のエイリス王を倒して王位を継ぎますが、分家が本家の王位を簒奪するといったところも似ています。中世ヨーロッパでは珍しいことではなかったかもしれませんが。

1453年 百年戦争の当初はイングランドが有利でしたが、ジャンヌ・ダルクの登場などによって最終的にフランスが勝利。イングランドは敗退し、フランスにあったすべての土地を失います。

1455年 優勢だった百年戦争が敗北に終わるとイングランドでは王権が失墜。ランカスター家とヨーク家の間で王位をめぐって薔薇戦争が起こります。ランカスター家の紋章が赤薔薇、ヨーク家の紋章が白薔薇だったため薔薇戦争と呼ばれます。

ヨーク家は、イングランド北部の都市ヨークを拠点とする一族で、やはりもとはプランタジネット家の分家です。

ランカスター家とヨーク家が争う様子は、どことなくラニスター家とスターク家の争いを思わせます。そして、薔薇戦争でランカスター家を率いていた人物がマーガレット王妃です。意志の弱かった夫であり国王であるヘンリー6世と幼い子どもに代わって軍を指揮し、ヨーク家と徹底抗戦する姿はサーセイ・ラニスターを思わせます。

1461年 薔薇戦争を有利に進めるヨーク家のエドワード4世が王位に就きます。ランカスター家は巻き返しを図りますが、ヘンリー6世や王子は殺害され、ランカスター家の継承者はほぼ全滅します。

1483年 ヨーク家のエドワード4世が亡くなると、遺児エドワードが後を継ぐはずでしたが、リチャード3世が即位したため国内は混乱します。リチャード3世は、事実はともかく、シェイクスピアの戯曲では極悪人の暴君として登場します。

1485年 ランカスター家とウェールズ王家の血を引くヘンリー・テューダーはフランスへ亡命していましたが、レッドドラゴンの紋章を掲げてイングランドへ上陸。レッドドラゴンはウェールズの伝説的な君主アーサー王を象徴しており、レッドドラゴンの紋章を使うことでヘンリーは自分の王位を正当化したのです。ヘンリー・テューダーはヨーク家のリチャード3世を破ってヘンリー7世として即位。翌年、ヨーク家のエリザベスと結婚して薔薇戦争を終わらせます。テューダー朝のはじまりです。


ヘンリー7世(画像出典:Winkipedia

ヘンリー7世の紋章(画像出典:Wikipedia

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勝つのはこの人!

ヘンリー・テューダーがドラゴンの旗を掲げてフランスからイングランドへ攻め込む姿は、東の大陸エッソスからドラゴンを引き連れてウェスタロスへやってくるデナーリスを想像させます。ということで、男女の違いはありますが、七王国の最終的な統治者はデナーリス・ターガリエンで決まりでしょう!
そして、ヘンリー・テューダーは敵対するヨーク家のエリザベスと結婚するのですが、ということはドラマでヨーク家を思わせるスターク家の誰かと結婚するということではないでしょうか!いや、もうジョン・スノウだろっていう。彼がスタークかというとアレですけど。



画像出典:HBO

と思ったところで、この結末だと王道すぎる気がします。個人的には正直、これでぜんぜんOKなのですが、むしろこの展開を見たいのですが、「ゲーム・オブ・スローンズ」にはこれまでに何度も予想を裏切られてきました。結末もきっと驚かせてくれるに違いありません。

デナーリスとジョン以外にあり得るとしたら誰なのか。もう少し英国の歴史を追ってみます。薔薇戦争の結果、多くの貴族が当主や後継者を失い、その後ヘンリー7世が制限したこともあり、貴族の数が減りました。代わりに台頭してきたのが地主層「郷紳(ジェントリ)」と呼ばれる人たちです。ジェントリは、もともとは封建領主の一族や騎士が地方に土着して地主になったものです。身分的には平民になりますが、独立自営農民(ヨーマン)よりは上。貴族より下だけど農民より上という身分です。

ジェントリ? なんか聞いたことあるかも。確かロバート・バラシオンの落とし子の名前がジェンドリーでした。むむっ。実は最終的に力を手にするのはジェンドリーなのではないでしょうか。ありえる!

というわけで、七王国の「鉄の玉座」を最終的に手にするのはジェンドリーの可能性が高い?


画像出典:HBO

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テューダー朝以降のイングランド

参考までに、ヘンリー7世が即位した以降のイングランドがどうなっていくのかを紹介します。

1603年 処女王エリザベス1世が亡くなるとテューダー朝は断絶します。スコットランド王がイングランド王として即位し、スチュアート朝がはじまります。これにより、歴史的に敵対関係にあったイングランドとスコットランドの関係は同君連合へと発展します。

エリザベス1世(画像出典:Wikipedia

1642年 ピューリタン革命が起こり、共和制がはじまります。チャールズ1世が処刑され、王は空位となります。

1660年 王政復古が起こり、オランダに亡命していたチャールズ2世が即位。スチュアート朝が復活します。

1707年 イングランドとスコットランドが法的に合併し、グレートブリテン王国が誕生します。

1714年 スチュアート家が断絶。独ハノーヴァー家からスチュアート家の血を引くジョージが王として迎えられます。ハノーヴァー朝のはじまりです。以降、植民地の拡大やアメリカ独立、フランス革命を経てグレートブリテンおよびアイルランド連合王国が誕生し、産業革命などを経て世界大戦へ向かいます。

1917年 第一次世界大戦中、敵国であるドイツの地名を避けてハノーヴァーからウィンザーへと家名を変更。ウィンザー朝となり、現英国王室につながっています。なお、現英国王室はウィンザー家ですが、女系でプランタジネット家の血を引いています。

ゲーム・オブ・スローンズ関連情報

当ブログでは、「ゲーム・オブ・スローンズ」および「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」の登場人物や世界地図などの情報を紹介しています。

以下にまとめていますのでご興味いただけたらご参照ください。

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ゲーム・オブ・スローンズ

世界地図

登場人物
登場人物の最後

シーズン1 あらすじ
シーズン2 あらすじ
シーズン3 あらすじ
シーズン4 あらすじ
シーズン5 あらすじ
シーズン6 あらすじ
シーズン7 あらすじ
シーズン8 あらすじ

スターク家
グレイジョイ家
タリー家
アリン家
ラニスター家
タイレル家
バラシオン家
マーテル家
ターガリエン家
ボルトン家
フレイ家
ナイツウォッチ
その他野人・ホワイトウォーカーなど

ウェスタロスの歴史

ロバートの反乱について

ウェスタロスの宗教

ハウス・オブ・ザ・ドラゴン

登場人物

-シーズン1 あらすじ
-第1話「ドラゴンの後継者」
-第2話「王弟」
-第3話「名を継ぐ者」
-第4話「ナロー・シーの王」
-第5話「われらは道を照らす」
-第6話「王女と王妃」
-第7話「ドリフトマーク」
-第8話「潮の主」
-第9話「翠の評議会」
-第10話「黒装の女王」

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