MAGI 天正遣欧少年使節 吉川晃司が10年ぶりに信長役をやった歴史ドラマを見た!




Amazonプライムビデオのオリジナル作品「MAGI 天正遣欧少年使節」を見ました。2019年1月に配信が始まったのですが、歴史ドラマが好きなので気になっていました。海外ドラマではないのですが、例外もありと開き直って紹介します。

概要

「天正遣欧少年使節」は、16世紀、天正年間(戦国時代末期)にキリスト教の洗礼を受け、ヨーロッパへ公式に派遣された少年使節のことです。歴史の教科書には名前ぐらいしか出てこない彼らですが、片道2年半の旅路を乗り越え、ローマ法王へ謁見しました。

「MAGI(マギ)」は聖書に登場する東方の三賢人のことで、キリストの生誕の際に現れたとされています。ドラマでは、日本で布教活動をする宣教師が、少年使節をマギに見立ててローマへ派遣します。

天正遣欧少年使節の4人の少年を、野村周平さん、森永悠希さん、井之脇海さん、緒形敦さん、一緒に旅をする混血児ドラード役を佐野岳さんが演じるほか、豊臣秀吉を緒形直人さん、織田信長を吉川晃司さんが演じています。

原案は若桑みどりさんの「クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国」。監督は「8月のクリスマス」や「西の魔女が死んだ」の長崎俊一。脚本は「戦国自衛隊」や「男女7人夏物語」NHK大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」の鎌田敏夫。音楽はNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の大友良英が担当しています。

Amazonプライムビデオ オリジナル作品
全10話(1話30〜40分程度)
2019年1月配信開始

MAGI 天正遣欧少年使節 あらすじと感想

あらすじ

戦国時代の日本。日本でキリスト教の布教活動をするイエズス会は、資金不足に悩んでいました。そこで宣教師ヴァリニャーノは、日本の少年たちをローマ・ヴァチカンのローマ法王に謁見させることを考えつきます。彼らを聖書に記された「東方三賢人(MAGI)」に見立てることで、日本での布教活動の重要性が高まり、資金援助を得ることができると考えたのです。そしてMAGIは本来3人ですが、ローマまでの航海は長く苦しい旅となるため、途中で少年が亡くなる可能性もあります。そのため4人送ることにします。

選ばれたのは伊東マンショ、中浦ジュリアン、原マルティノ、千々石ミゲルの4人でした。

宣教師ヴァリニャーノやフロイスとともに天下人織田信長に謁見した少年たちは、公的に日本の王が送り出した使節としてローマへ出発します。

少年たちは嵐を乗り越え、インド洋を渡り、喜望峰を抜け、ポルトガルへ着きます。日本を発って2年半の月日が流れていました。さらにスペイン、イタリア・フィレンツェを経てローマへ向かいます。少年たちはここに至るまでの体験を通し、奴隷として売買される人間、聖書の解釈が違うために火あぶりにされる異端者などを目にし、神の愛や信仰、生きるということについて考えるようになっていました。そしてついに法王に謁見します。

ローマ法王への謁見を果たした少年たちは、ふたたび船に乗り日本への帰路につきます。しかし日本では、謀反によって命を落とした信長に代わり秀吉が天下に君臨していました。秀吉は、君主の命令を聞かないキリシタンや日本人を奴隷として売買するポルトガル人を憎み、バテレン追放令を出したため、キリスト教徒への弾圧がはじまっていました。

感想

まず気になったところ。全体的に展開があっさりしていて厚みが感じられません。日本からヨーロッパまで長く苦難の旅というものをやたらと強調するのですが、第1話で日本を出立して第3話にはヨーロッパに着いてしまうのでそれほど長い時間が経過した気がしません。一応、わざとらしく「あれからもう2年半」と言ってみたり、ひけらかすように嵐や凪(風が吹かないので船が進まない状態)に悩まされたりします。
史実では、彼らの旅は往復8年に渡ります。10代の少年が8年も経てば容姿も変わってくると思いますが、ドラマだから仕方ないとはいえ、外見が少しも変わらないのも時間の経過を感じない理由だったかもしれません。

登場人物も伊東マンショについては生い立ちが少し語られますが、ほかの3人については大きく取り上げられることはありません。全10話ありますが、各話30分〜40分程度です。各話60分とか、もう少し長くしてもいいから、その分、各人物についてもっと掘り下げても良かったのではないかと思います。
また、少年たちの言葉使いが現代の若者言葉っぽいところも気になりました。「俺たちはお前らの言いなりにはならないっ」「お前に何がわかるんだよ」とか使っていたのでしょうか。信長のことを信長と呼ぶのも気になるし、髪型も本来は短くしていたのではないでしょうか。

また、信長やスペイン王、法王たちとの謁見シーンに迫力がありません。安土城では織田信長と明智光秀しかいません。スペインではフェリペ2世に謁見しますが宮廷はガラガラ。フィレンツェの舞踏会で踊っているのは4組だけ。ヴァチカンの謁見シーンでは法王のほかに枢機卿みたいな人たちが7、8人座っているだけで空席が目立ちます。どこへ行っても人がいない。

さらに水夫の演技がへたくそ。エキストラなのだと思いますが、食料や水不足、直射日光にやられて船上で弱っている様子や陸が見えて喜ぶ様子がわざとらしいです。宣教師たちも少年たちと話すときは日本語を使ってくれるのですが、なんかいかにも台詞っぽいというか、やっぱりたどたどしい。「命ガケノ旅ニデロ!」「ヨーロッパヲナメルナッ」どうせなら英語のまましゃべってもらって字幕の方が良かったと思います。

端的にいえば安っぽい。

ではつまらないのかというとそんなことはありませんでした。天正遣欧少年使節という題材はとても興味深く、彼らについてもっと知りたいと思いました。ドラマは大味でしたが、原案となった小説ではもっといろいろ書かれているのだと思います。ポルトガル人が日本人を奴隷として東アジアやヨーロッパで売買していたということも知らりませんでした。

都合のいいオリジナルキャラが出てきて狂言回しするようなこともありません。少年たちに同行したドラードはドラマオリジナルなのかと思ったら、実在し、しかもヨーロッパから日本へ活版印刷を伝えた人物でした。ちょっとだけ出てくる宣教師もみんな実在した人物です。幼なじみや旅先で出会って恋に落ちるような女性も出てきません。これらの点はとても好感が持てました。

さらに、伊東マンショは大友宗麟の名代として参加しますが、近年の研究では、これは有馬氏や大村氏、ヴァリニャーノらによる偽証だった可能性も指摘されているそうです。ドラマでもヴァリニャーノ神父が偽の書状を使ってヴァチカンに印象操作を行っていました。イエズス会内部の権力闘争を描いてドラマチックに仕上げようとしているのだろう、とうがった見方をしてしまいましたが、そういったこともまったくのフィクションではないようです。作品が、近年の研究にもとづいて作られていることがわかります。

シーズン1となっていますが、続きはないと思います。ドラマは少年たちがローマから帰路に就いたところで終わります。日本では秀吉によってキリスト教の迫害がはじまろうとしているので、少年たちに苦難が待っていることは確実です。ドラマになりそうですが、帰国後の様子はエピローグとして紹介されていました。

MAGI 天正遣欧少年使節の登場人物

伊東マンショ

大友宗麟の血縁だったため、名代として参加。日向国・主伊東氏の出身。伊東氏が島津氏の侵攻を受けた際、豊後国に落ち延び、キリスト教と出会って有馬のセミナリヨに入りました。後年、司祭に叙階されます。1612年、長崎で死去。

キャスト:野村周平
1993年兵庫県出身。芸能界デビュー前はスノーボード選手として活動。2009年に開催されたオーディションでグランプリを獲得。翌年、ドラマ「新撰組PEACE MAKER」で俳優としてデビューしました。2012年、NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」に出演し注目を集めました。

千々石ミゲル


肥前国・大村純忠の名代。純忠の甥で肥前国・有馬晴信の従兄弟。4人の中で唯一、後に棄教したとされています。ただし、なぜ棄教したのかはわかっていません。2017年、千々石ミゲルのものと思われる木棺が発見されました。そこにはロザリオなどが埋葬されていたそうです。これにより棄教説が覆る可能性も指摘されています。また、キリシタンによる「島原の乱」を率いた天草四郎は、千々石ミゲルの隠し子だったという説もあります。

キャスト:緒形敦
1996年神奈川県出身。父は俳優の緒形直人、母は女優の仙道敦子、祖父は俳優の緒形拳。2017年テレビドラマ「陸王」でデビュー。オーディションを経て本作「MAGI 天正遣欧少年使節」に出演。共演はしませんでしたが、父・緒形直人とはじめて同じ作品に出演しました。

中浦ジュリアン

後年、司祭に叙階。江戸幕府によるキリスト教の弾圧下、布教に励みましたが、1633年、長崎で穴吊るしの刑によって殉教。2007年に福者に列せられました。天正遣欧少年使節の一員で福者になるのは彼がはじめてです。

しかしながら穴吊るしの刑というのは残酷で拷問に近い刑でした。底に糞尿をためた穴に逆さ吊りにされるのですが、逆さまになっているため頭に血がたまります。そこで、すぐには死なないように耳やこめかみに血抜き用の穴を開けます。中浦ジュリアンは吊されてから4日目に亡くなったそうです。

キャスト:森永悠希
1996年大阪府出身。2001年ごろから子役として活動を始め、NHK連続テレビ小説「芋たこなんきん」「ウェルかめ」やテレビドラマ「牛に願いを Love&Farm」「おちゃべり」などに出演しました。2007年、平山秀幸監督の「しゃべれども しゃべれども」で映画デビューしました。

原マルティノ

史実では副使。使節の中では最年少と伝えられています。後年、司祭に叙階。1629年、追放先のマカオで死去。

キャスト:井之脇海
1995年神奈川県出身。2006年に子役デビュー。映画「夕凪の街 桜の国」で俳優としてデビュー。NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」「ひよっこ」、大河ドラマ「平清盛」「おんな城主 直虎」などに出演しています。

豊臣秀吉

戦国時代末期の武将。織田信長の家臣。本能寺の変で明智光秀に信長が討たれると、光秀を破って信長の後継として地位を固めます。その後、日本全国の大名を臣従させて全国を統一しました。九州へ攻め入った際、宣教師によって強制的な改宗や寺社仏閣の破壊が行われていることや、ポルトガル人によって日本人が奴隷としての売買されていることなどを知り、「バテレン追放令」を発令しました。

キャスト:緒形直人
1967年神奈川県出身。1988年映画「優駿 ORACION」でデビュー。その後も「予備校ブギ」「北の国から’89 帰郷」大河ドラマ「信長 KING OF ZIPANGU」「北の国から’92 巣立ち」などに出演するほか、TBSのドキュメンタリー番組「世界遺産」のナレーションも務めました。近年では映画「64-ロクヨン-」(2016年)、映画「万引き家族」(2018年)などに出演しています。父は俳優の緒形拳、妻は女優の仙道敦子。千々石ミゲルを演じた緒形敦は長男です。

織田信長

戦国時代末期の尾張国(現愛知県)の武将。駿河の今川氏、美濃の斎藤氏を滅ぼしたのち、足利義昭を擁して上洛。浅井・朝倉氏、比叡山を撃破したのち、義昭を追放して室町幕府を滅ぼしました。さらに武田氏を破り、石山本願寺と和議を結んで毛利氏を攻めましたが、明智光秀に本能寺で討たれ、全国統一を目の前にして倒れました。安土城を築き、関所の撤廃や楽市楽座、検地などの革新的な政策を行ないました。

キャスト:吉川晃司
1965年広島県出身。1984年に映画「すかんぴんウォーク」でデビューし、同時に主題歌「モニカ」で歌手デビューしました。1988年には布袋寅泰とロックユニットCOMPLEXを結成。1990年に活動停止し、その後ソロとして活動。映画「るろうに剣心」鵜堂刃衛、NHK大河ドラマ「八重の桜」西郷隆盛、TBSドラマ「下町ロケット」財前道生など、俳優としても活躍しています。今回、2009年大河ドラマ「天地人」で演じて以来10年ぶりに織田信長を演じています。

コンスタンティノ・ドラード

日本人とポルトガル人のハーフ。イエズス会の下働きとして働いていましたが、少年たちの旅に同行します。

史実では、天正遣欧少年使節に同行し、グーテンベルク式活版印刷機を日本に伝えた日本人と伝わっています。日本名は不明。帰国後、禁教令によってキリスト教への弾圧が高まるとマカオへ避難。マカオのセミナリヨの院長になり、1620年に死去しました。

キャスト:佐野岳
1992年愛知県出身。2011年ジュノン・スーパーボーイ・コンテストグランプリ受賞。2012年に舞台「SAKURA」でデビュー。2013年「「また、必ず会おう」と誰もが言った。」で映画初出演/初主演し、同年に「仮面ライダー鎧武/ガイム」にてテレビドラマに初主演しています。

アレッサンドロ・ヴァリニャーノ

イエズス会巡察師。日本を訪れたヴァリニャーノは、キリシタン大名・大村純忠と知り合い、財政難に陥っていた日本の布教事業の立て直しと、次代を担う邦人司祭育成のため、キリシタン大名の名代となる使節をローマに派遣しようと考えます。

織田信長に謁見した際、安土城を描いた屏風を贈られ、屏風は教皇グレゴリウス13世に献上されましたが、現在、その存在は確認されておらず、行方不明のままです。また、従者として連れていた黒人を信長に献上し、彼は弥助と名づけられて信長に仕えました。

キャスト:エリック・ボシック
俳優・写真家。2010年塚本晋也監督の映画「鉄男 THE BULLET MAN」で主演しました。

ディオゴ・メスキータ

イエズス会宣教師。少年たちに付き添ってヨーロッパへ向かいます。巡察師ヴァリニャーノがイエズス会で力を付けることに脅威を感じています。

キャスト:ボブ・ワーリー
モデルや映画、テレビなどで活動中。NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」やテレビCMなどに出演。

関連情報

天正遣欧少年使節 肖像画


(画像出典:Wikipedia)

少年たちがヨーロッパを訪問中の1586年、ドイツのアウグスブルグで印刷された肖像画です。右上が伊東マンショ、右下が千々石ミゲル、左上が中浦ジュリアン、左下が原マルティノ、中央がメスキータ神父と伝わっています。

伊東マンショ 肖像画


(画像出典:Wikipedia)
2014年、イタリア北部在住の個人所蔵となっていた伊東マンショ像が発見されました。

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原作を読む


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